冷害と冬管理について
今年もまたひとつ、季節が巡りました。
今回は、この4年ほど取り組んできた冬管理と冷害についての考察をまとめてみたいと思います。
LEDで屋内管理をしていれば、冷害とはほぼ無縁でしょう。いわゆる“インドアグリーン”とは少し方向性が違います。
しかし、外に出て土に触れ、日光を浴び、季節を感じながら植物を育てる——
それこそが園芸の醍醐味ではないでしょうか。
春になり、暖かさとともに成長点がモゾモゾと動き出す。
地面から子株がポコポコと現れる。
そんな瞬間に、心の中で涙している偏愛家(変態?)の皆さまも多いはずです。
冷害の原因は「寒さ」だけではない?
さて、本題です。
冷害の原因はもちろん「寒さ」です。
しかし実際には、同じ環境でも個体差や管理方法によって被害に差が出ます。
種として根本的に寒さに弱いものは別として、
管理次第で植物のポテンシャルを引き出せば、冷害はある程度軽減できるのではないか——
そう考え、私はアガベの栽培を通じて試行錯誤してきました。
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実験材料:イシスメンシス(兜🦀錦)
検証に使ったのは、私の大好きな
Agave isthmensis(兜🦀錦)。
通年屋外管理で美しい大株を作れないか。
そんな思いから、数年にわたり実験(失敗)を重ねてきました。

管理環境
以下の4パターンで比較しました。
A:屋外・風よけ半密閉・日当たり良
B:屋外・風よけ半密閉・日当たり悪
C:軒下・日当たり良
D:軒下・日当たり悪
一般的にイシスメンシスの耐寒性は「0℃付近」と言われています。
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失敗から学ぶ
● C(軒下・日当たり良)
5年前、5号鉢サイズを秋に植え込み、Cで越冬。
→ 3株すべて寒さで枯死
寒風による霜焼けのようなダメージを疑いました。
● A(屋外・半密閉・日当たり良)
次は風を防ぐ目的でA条件に変更。
10株以上管理し、全株生存。
しかし、葉縁に葉焼けのような症状が発生。
さらに観察すると、鉢サイズによって被害に差がありました。
「根張り」に注目
植物の命は「根」。
そこで、
根張りが十分な個体
秋植え替え直後で根張りが不十分な個体
をA条件で比較。
結果:
根張り十分 → 冷害は軽減
しかし葉縁の傷みは依然として発生
根だけでは説明しきれない何かがある。
今季の並行試験(A〜D)
昨年11月から、A〜Dすべてで並行試験を実施。
そして驚きの結果が出ました。
冷害が「まったく出なかった」のは…
B(屋外・半密閉・日当たり悪)
これは非常に意外でした。
冬でも日当たりが良い方が
ビニール内温度が上がる
光合成ができる
越冬に有利
と考えていたからです。

条件A 根張り→良

条件A 根張り→やや詰まり気味

条件B 根張り→良
予備実験(チタノタ)も傍で実施してましたが結果は以下のとおりです。

条件B 左写真 冷害なし
条件D 右写真 葉の8割冷害により壊死
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見えてきた仮説
今回の結果から考えられること:
冬は光合成効率が低下している
断水+強光がストレスになっている
昼夜の寒暖差がストレスになっている
根の状態がこれらと複合的に影響している
つまり、「寒さ」単体ではなく、ストレスの総量が冷害を引き起こしている可能性。
春に植え替えたB管理の6号鉢も、
6株中6株すべて冷害なしでした。

私の環境での結論
私の栽培環境では、
B(屋外・半密閉・日当たり悪)が最も安定した越冬条件
という結果になりました。
しかし、同じ冬は二度と来ません。
その年その年で環境は違います。
結局のところ——
地道に経験値を積み、観察し、調整すること。
ゲームでいうならマルチでついていくだけではなく、ソロで色んなモンスターと戦って立ち回りを学ぶということです。
レベルだけ高い初心者プレイヤーにならないように。
これからも園芸を楽しみながら、検証を続けていきたいと思います!
それでは、良い春を!
地上の楽園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」
私が死ぬまでには一度訪れたかった植物園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイはシンガポールのマリーナ湾沿いに広がる。約100ヘクタールの敷地に多彩な植物と革新的な建築が融合した近未来型の植物園。

象徴的な「スーパーツリー・グローブ」は高さ25〜50メートルの人工樹で、その周りに植栽された熱帯植物は全てが苗ものということに驚きを隠せなかった。手入れには巨大クレーン車が用いられており、この規模間での植栽を目の当りにしたら、感動するほかないだろう。植栽されている植物は特にアナナス科の植物が多く、色とりどりのスーパーツリーはまるで絵本の中にでてくるユニークな木のようだった。シンガポールの温暖な気候と管理スタッフの確かな技術があってこそ、スーパーツリーはガーデンズ・バイ・ザ・ベイの象徴となっている。


世界最大級のガラス温室「フラワードーム」と「クラウドフォレスト」。「フラワードーム」では地中海性気候の植物と多肉植物が展示されている。ただ温室が世界最大ということもあり、サイズ感が遠くからだと分からなくなる。10m近くあるヤシの木もこの通り。

まるで自分が小人にでもなったかのように感じる。
しかし、小人の目線で足元に目を向けてもそこには色とりどりの草花が植栽されており、いちいち感動させられる。

特に、ランの展示には力が入っており、これまでになかった斬新な組み合わせの展示やランの花色から着想を得たかのような建築物との展示など非常に面白かった。



「クラウドフォレスト」では霧に包まれた幻想的な空間と巨大な屋内滝が訪れる人を魅了する。これまで、植物園を訪れる中で園内に滝があるところはいくつかあったが、山があるところは流石になかった。人工的に作られた山と滝であるが、チープな点は一つもなく、ただただ、感動して言葉を失うしかなかった。


山の中には巨大なアルカンタレアや葉長が私の背丈近いフィロデンドロンがあり、植栽の技術と管理を見ても、ネット記事にある通りここが「若き園芸家にとっての聖地」と言えることに間違いはないだろう。
温室内については細かいことを記述し始めるときりがないのでこのあたりにして、時間があれば次は外の展示について書きます!期待せずにお待ちください。
Agave xylonacantha variegata ‘ Frostbite ’
フロストバイトはキシロカンサの黄覆輪タイプ。
キシロカンサの耐寒性を引き継いでおり、霜に当たらなければ九州北部で屋外越冬可能である。

しかし、このフロストバイトはキシロカンサ由来なのか少々疑問が残る。斑入りであるため成長が遅いというのは分かるがあまりに根が弱く細い。キシロカンサ自体は成長の早い種であるため、他の種が入っているか、ドワーフが何かの変異ではなかろうか。
いずれにせよ美しいことに変わりはない。他の種にはないトゲトゲとした力強さ、我の強さを見せながらも美しい葉色をもつフロストバイト。冬の季節はより一層、斑が冴えて美しい姿を見せてくれる。どこかで出会ったら是非手にしてほしい。
AGAVE hybrid (M. blood spots × A filifera)
ハイブリッドの中で美しさが際立つブラッドスポットとフィリフェラのハイブリッド。


子株で購入した際はここまでのポテンシャルを秘めていると正直分からなかった。。というのも親株の画像を探しても見つからず、ただ二つのハイブリッドで良い形質を引き継いでいるのは子株でも分かった。
それから移植を繰り返して。
鉢の中でこれだけの表現ができたら何も言うことはない。まるで工業製品のように整った草姿に、2種の絶妙な葉色がのったことで、表現し難い美しさが生まれている。
この表現はほぼエケベリアだ。、
育てやすさはマンガベが片親のため
成長も早く、耐寒性はフィリフェラ由来で九州北部で野外で越冬できるくらいには強い。
子株は、、、4年育てて0ということで増やしたい品種によって増えないと言うアガベあるあるのジレンマである。この株は親株として表現の限界がどこか調べるために、鉢上げしていくが、本格的に増やすならば、割るのが一番早いだろう。
Agave isthmensis ' Atomic Gold '
日本の重田氏によって作出された一品、アトミックゴールド。草姿の整い方と斑の濃さに息を呑む。


イシスメンシスに由来するアトミックゴールドはパッキリとした黄色の覆輪が特徴的で、大きさも最大で40-50cm以内でまとまってくる中型から小型に分類されるアガベ。
耐寒性は通常のイシスメンシスと変わらず、寒冷地でなければ簡易温室で何とか冬を越えられる。
コンパクトな状態で表現ができるのは何とも日本人らしい作品といえる。島国でアガベの栽培に決して向いているといえない気候で作出されたからこそ、狭い場所でもどこでも園芸を楽しみたいという日本人の心が表れているのかなと勝手に想像してみたりもする。
一昔前、自分にとって憧れだったアガベ。最近は値段も少し落ち着いてきたが、その美しさは僕の中でゆらぎない。いつか私もこんなアガベをと思わせてくれる最高のアガベだ。
Agave macroacantha
黒い鋸歯と青い葉が特徴的なアガベ。実生では形質の分離が多く見られる。
短い葉、太い鋸歯、青が強い葉、真っ黒な鋸歯など表現が非常に豊かな反面、バランスよく整った草姿になる個体は多くない。
下には青葉と黒い鋸歯が特徴的なスタンダードなタイプ(001)、緑の短い葉と太い鋸歯が特徴的なショートリーフタイプ(002)の写真を示す。

001

002
耐寒性について詳しく言及される記事は少ないが、アガベの中では耐寒性がない部類となるだろう。
九州北部でも霜に当てれば大きな傷みが出る上、株が成熟していなければ根腐れを起こして枯れるリスクもある。3℃以下になる場合は軒下または風の当たらない簡易温室に避難させ、-3℃以下の氷点下になる場合は室内への取り込みをお勧めする。
用土の配合によって草姿が乱れる印象は少ないが、生育の早い個体のため、移植と鉢選びには気をつけたい。
大きくして美しい草姿を楽しむのも良し、コンパクトに仕立てて鉢の中での表現を突き詰めるのも良し。なかなか育てがいのあるアガベだ。マイナー品種ではあるがオススメしたい。
Agave potatorum 'huraizin'
葉が団扇のような形になるタイプの雷神。黒いトップスピンとマリンブルーの葉色が美しい。

最大サイズもポタトラムの仲間のため、12号以内の鉢サイズで収めることが出来る。葉枚数が増えるほど完成度が高まる一方で、全体のサイズが大きくなるのは比較的遅い。
トレードウィンズやラムランナーなどベースがこの風雷神である品種は多く、アガベを始めたての方、多肉植物の中のさわりでアガベを育てたい方にはオススメしたい品種である。

ラムランナー
ポタトラム スポーン
子株はランナーでよく増え、耐寒性もある。増やしてよし、育ててよし、園芸を存分に楽しめる素晴らしい品種だ。
チタノタにどうしても目が向きがちだが、色々な品種を育てた方は結局、ポタトラムやイシスに落ち着くとか落ち着かないとか。私のお気に入りの品種の一つである。